「軍事ケインズ主義」と「道路ケインズ主義」(2)
2008年8月19日
宇佐美 保
『世界:2008年4月号』の“軍事ケインズ主義の終焉(チャルマーズ・ジョンソン 訳=川井孝子・安濃一樹(翻訳家=TUP))”の記述に多くの点で驚かされますので、先の拙文《「軍事ケインズ主義」と「道路ケインズ主義」(1)》に引用させて頂いた以外の部分も、本文に、改めて掲げさせて頂きます。
“軍事ケインズ主義の終焉”の冒頭部分には次のような記述があります。
この政府はもう支出を抑えようとさえしない。 ブッシュ政権は負債を次の世代に押しっける。これから何世代もかけて借金を返済するか、あるいは踏み倒すしかない。 このような無責任きわまりない財政施策を粉飾するために、(たとえば貧しい国々から前例のないほど借金するなど)さまざまな会計操作が行われてきた。もうすぐ、こんなごまかしは利かなくなる。 アメリカの債務危機には三つの大きな特徴がある。 第一に、現会計年度(二〇〇八年)において、合衆国の安全保障とは何の関係もない「防衛」プロジェクトに、正気の沙汰とは思えない金額が支出されている。一方で、人口の極少数を占める最富裕層の税負担率は、驚くほど低く据え置かれたままだ。 第二に、国内の製造基盤が止めどなく衰退し、海外に仕事を次々と奪われていっても、巨額の軍事費を支出していれば十分に経済を支えられると、いまだに信じられている。これが「軍事ケインズ主義」と呼ばれる思想である。・・・ 第三に、アメリカは(人材と予算に限りがあるにもかかわらず)軍国主義にすべてを賭け、社会的インフラなど、国家の長期的な繁栄に欠かせない投資をないがしろにしている。これを経済用語で「機会損失」といい、別のことに金を使ったために失われたものを意味する。 |
この米国の現状は、「軍事」を「道路」にでも置き換えれば、日本の現状のようです。
更には、次のようにジョンソン氏は続けておられます。
アメリカの公教育システムは、目も当てられないほど廃れてしまった。すべての国民に健康保険を提供することもできていない。世界最大の環境汚染国として果たすべき責任も放棄してきた。そして何よりも、民間のニーズに応える製造業が競争力を失ってしまったことに注目しなければならない。 ・・・ |
日本の場合とて、「健康保険」は「後期高齢者医療制度」などとの怪物が姿を現したりして暗雲が立ち込め始めました。
「公教育システム」に関してはどうでしょうか?
今から、50年位前には、公立高校から多くの人が、東大等の国立有名校に入学して行きました。
勉強などせず、野球ばかりしていた私の場合は、近所の親友が入学を希望していた近くの公立高校へ一緒に受験し入学してしました。
ところが、その高校は有名進学校でしたので、大学進学など夢にも思っていなかった私まで、周囲の友人達の雰囲気に飲まれて、いつの間にか「アインシュタイン、エジソンを目指して」東工大の門をくぐってしまったのです。
こんな事が以前は実際に起こったのです。
その結果、私は、今までの電気の理論をほとんど全て塗り替える理論を打ち立て、それを『コロンブスの電磁気学』に記す事が出来ました。
(拙文《『コロンブスの電磁気学』の概略》をご参照下さい)
昔話は兎も角、現状はどうでしょうか?
「東洋経済オンライン」を訪ねますと、リチャード・カッツ氏の「所得格差がもたらす日本の教育格差」には、
次のように書かれています。
戦後の日本で最も賞賛に値する成果の一つに、高い社会的流動性を持った能力主義国家の建設がある。貧困層や中間層の子供でも、能力と野心さえあれば社会的に上昇することができた。これは子供たちだけでなく、国家にも大きな恩恵をもたらした。誰もが等しく教育の機会を得ただけでなく、教育に投じられた資源が平等に配分された。その結果、両親の資産や社会的地位によって聡明な子供たちの可能性が制約されるということはなかった。 |
ここでのリチャード・カッツ氏の記述通りの恩恵を私は受けてきました。
でも、現状に関して、リチャード・カッツ氏は次のように続けられております。
だが日本は“機会が平等な国”の地位を失おうとしている。 ・・・ こうした変化を引き起こしている理由はたくさんあるが、その一つは教育機会の変化である。日本は教育に熱心な国であるにもかかわらず、公的な教育支出は驚くほど少ない。日本の公立学校と大学の学生1人当たりの支出は、OECD21カ国中12位である。OECD加盟国では、大学教育に対する公的資金の平均支出額は民間支出額のほぼ3倍に達している。だが日本では、その関係は逆になっている。私的な支出額は公的な支出額を43%も上回っている。 公的資金の貧弱さと公立学校の教育の質の低下に対する懸念、能力に応じた教育を妨げている偽りの“平等主義”が、中産階級の親に大きな負担をかける結果となっている。子供たちに十分な教育の機会を与えたければ、私立学校に頼らざるをえず、予備校に通うためにおカネを使わなければならない。2005年の時点で高校生の30%が私立高校に通っている。子供の人生は親の資金力によって制約されているのである。 |
勿論、教育の質が「東大への入学率」で評価できるとは思いませんが、私の母校(公立高校)では、かつては毎年100人前後が東大に進みましたが、今では数名のようです。
そして、次の記述のような学習塾などの存在も、当時の私達は知りませんでした。
一方で授業料に学習塾などの費用を合わせた「学習費」は年々増加して、04年では私立高校の生徒1人当たりの金額は年間103万5000円。公立高校の同51万6000円と比べ2倍もの開きがある。 その結果、生徒の学力の差が拡大しただけでなく、他の国と比べて平均的な生徒の成績も驚くほど低下してしまった。従来、日本の生徒は教育の達成度でつねに上位にランクされていたことからすれば、これは落胆すべきことである。 00年と03年にOECDは「国際学習到達度調査」で15歳の生徒を対象に数学、科学、読解、問題解決のテストを行った。00年から03年までに日本の生徒の数学能力は1位から6位に落ち、読解力は8位から14位に落ちている。ただ科学の分野は2位を維持している。読解力では六つのレベルのうち最低レベルであった日本の生徒の比率は、00年の2.7%から03年に7.4%に増えている。これはOECDの平均よりも悪い。対照的にトップの水準の生徒の比率はほぼ10%で変化していない。 ・・・ つまり、日本の教育格差は他の国よりも拡大しているのだ。納見准教授によれば、拡大のスピードは他の国よりも速くなっているという。 日本が依然として、世界で最も優れた教育を提供している国の一つであることに変わりはないが、最も優れた生徒の割合は減少してきている。子供の潜在能力は、親の所得と社会的な地位によってますます制約されるようになっている。こうした状況は、雇用者が必要とするスキルと、求職者が持っているスキルのミスマッチを引き起こす可能性がある。このような事態は日本の生活水準だけでなく、日本の民主主義の活力にとっても重要な意味を持ってくるはずだ。 |
「子供の潜在能力」は、いつどのようにして開花するかは、予測不可能です。
なのにその開花の可能性、方向性が、「親の所得と社会的な地位」で制約されては、美しい花も、見事な実も期待できません。
この歪んだ花、歪な果実の最たる悪例を、米国でも日本でも「2世3世によって支配される政治」に見る事が出来るではありませんか!?
なにしろ、2世大統領が支配している米国は、次のような状態なのですから!
アメリカ軍事帝国の全貌が明らかにならないように、政府は長年にわたって、軍事に関連する大きな支出を、国防総省ではなく、他の省庁に割り当てた予算の中に隠してきた。たとえば、エネルギー省の予算に組まれた二三四億ドルは、核弾頭の開発と管理に使われる。国務省は二五三億ドルを(おもにイスラエル・サウジアラビア・バーレーン・クウェート・オマーン・カタール・アラブ首長国連邦・エジプト・パキスタンなど)他国の軍隊を支援するために投じる。この他にも、・・・ イラクとアフガニスタンの両戦争では、これまでに少なく見ても、それぞれ二万八八七〇名と一七〇八名の兵士が負傷している。退役軍人省には少なくとも七五七億ドルが配分され、うち五割が重度の障害を抱える負傷兵の長期治療にあてられる。この予算では不十分なことは明らかで、もう誰もがあきれ果てている。また、四六四億ドルが国土安全保障省にわたる。 こう数字を書き連ねてきたが、隠された軍事予算はまだ他にもある。・・・したがって、合衆国の現会計年度(〇八年度)における軍事支出は、控えめにみても合計で一兆一〇〇〇億ドルを下らない。 |
このように日本の国家予算以上の金額を軍事に注ぎ込んだ米国の末路を、ジョンソン氏は、次のように書かれています。
・・・ 核兵器の例を見れば、ことの異常さに息をのむだろう。四〇年代から一九九六年まで、合衆国は、核兵器の開発・実験・製造に五兆八〇〇〇億ドル以上を費やした。備蓄がピークに達した一九六七年には、三万二五〇〇発もの配備可能な原子爆弾と水素爆弾を保有していた。結局、幸いながら、一発も使われることなく無駄になった。 このように政府は、雇用の維持だけを目的に、不必要な仕事を作り出すことができる。軍事ケインズ主義の本質がここに見事に示されている。軍事上の秘密兵器だった核は、アメリカにとって経済上の秘密兵器でもあった。二〇〇六年になっても、なお九九六〇発が保有されている。正気を失わないかぎり、今日いかなる使い道もない代物だ。 ここに費やされた何兆ドルもの資金は、さまざまな問題を解決するために使うことができたはずだった。社会保障を充実させ、国民皆保険を導入することもできた。教育の質を高めて、誰もが高等教育を受けられるようにすることもできた。 高度な技能職がアメリカ経済から流出することも、きっと止められたに違いない。 |
このように「軍事ケインズ主義」が、「今日いかなる使い道もない代物である核兵器の開発・実験・製造に五兆八〇〇〇億ドル以上を費やした」愚を反省することなく、末路であることも意識せず、今度は「核」の変わりに「ミサイル防衛(MD)計画」に登場させています。
毎日新聞(2006年8月10日)には次のように書かれています。
先月5日の北朝鮮による弾道ミサイルの連続発射を受けた日米外務・防衛当局による審議官級協議が7、8の両日、ワシントンで開かれた。政府は、日本のミサイル防衛(MD)システムの前倒し配備への協力を要請し、米側は「検討する」と回答。ミサイル発射時に浮き彫りになった情報共有や共同運用の課題について協議を促進することで一致した。 日本側が求めたのは、地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」の前倒し配備など。来年度末までに航空自衛隊入間基地(埼玉県)に配備される予定のPAC3は、国内メーカーによるライセンス生産ではなく米国から購入する予定であることから導入時期を早めるよう要請。また、海上配備型迎撃ミサイル「SM3」については今月中にSM3搭載イージス艦「シャイロー」が横須賀に配備予定だが、ミサイル発射の兆候がある際、ハワイ配備の他のSM3搭載イージス艦が日本周辺に展開できるか、検討を求めた。 ・・・ PAC3( パトリオット能力発展型第3段階) |
更に、東京新聞(2007年12月19日)は次のようです。
・・・ 防衛省は、北朝鮮の弾道ミサイル対処に二隻のイージス護衛艦を日本海に配備することにしている。改修されてMD対処艦となった日米のイージス艦は、速度の遅い短距離弾道ミサイルなら二発まで連射されても高い確率で迎撃できる。 だが、日本に届く北朝鮮の中距離弾道ミサイル「ノドン」は約二百発。イージス護衛艦の探知能力、迎撃ミサイルの搭載数には限りがある。続けて何発も撃たれれば防衛網は突破される。昨年の連続発射は、北朝鮮が「MDの盲点」を熟知していることを見せつける示威行動ではなかったか。 海自将官は「MDは抑止のための兵器。60%でも迎撃できれば、相手は発射ボタンを押せなくなる」と話す。MDと弾道ミサイルの関係は、冷戦期の米ソが核ミサイルを核ミサイルで抑止したのと同じ、心理戦というのだ。 ・・・ 九八年に発射されたテポドン軌跡の延長線上にハワイがある。米国ヘ向かう弾道ミサイルを迎撃すれば、憲法で禁じた集団的自衛権行使に当たるが、米国は本土防衛に協力するよう求めている。 MDに抑止効果があるなら、保有するだけで十分なはずだ。それでも発射された場合を考えれば集団的自衛権行使の議論は避けられないという。日本を守るはずのMDは「日本の国是」に向けられた武器でもある。 ・・・ <ミサイル防衛(MD)システム> 飛来する弾道ミサイルをイージス護衛艦から発射するスタンダードミサイル(SM3)と地上のパトリオットミサイル(PAC3)で対処する迎撃システム。米国で開発された。配備に多大な費用がかかる一方、迎撃能力が疑問視され、米国の同盟国の中では日本だけが導入している。 |
海自将官の「MDは抑止のための兵器。60%でも迎撃できれば、相手は発射ボタンを押せなくなる」との見解は、「MD」も「核」と全く同じ運命を辿るだけでしょう。
なのに「米国の同盟国の中では日本だけが導入している」と言うのですから、どうなっているのでしょうか?
ところが懲りない米国は「核」同様に「MD」に精力を傾注し始めています。
毎日新聞(2008年8月16日)には、次のように書かれています。
・・・米国は14日にポーランドと合意したミサイル防衛(MD)計画で、ポーランドの防衛力強化支援にまで踏み込んだ。MD計画の「仮想敵国」はロシアではなくイランなど「ならず者国家」としてきた米国の主張は説得力を失う恐れがあり、米露の緊張がさらに高まるのは必至だ。 MD計画はイランによる欧州などへの弾道ミサイル攻撃を防ぐもので、ポーランドに迎撃ミサイル基地、チェコにレーダー基地をそれぞれ設ける。米国がMD用基地とは別にポーランドに配備を約束した迎撃ミサイル・パトリオットはロシアなど近隣諸国の攻撃を想定したシステムだ。・・・ |
「軍事ケインズ主義」とは、「なんとしても戦争経済を永遠に続け、軍事に金を使っていれば経済を潤すと信じるイデオロギーである」であるなら、利権とは無縁の良識ある人物がこのような愚劣な政策を執るわけはありません。
なにしろ、1970年には、「軍事ケインズ主義の弊害」が次のように訴えられていたのですから。
軍事ケインズ主義の弊害については、コロンビア大学のシーモア・メルマン教授(一九一七〜二〇〇四)が先駆的な研究を残している。産業工学と生産工程を専門としたメルマンは、冷戦が始まってから軍備増強にかまけてきたアメリカが、思いがけない窮状に追い込まれることを予見していた。一九七〇年に出版された著書(Pentagon Capitaris:The
Political Dconomy of War 仮題『ペンタゴン資本主義 戦争の政治経済』)から引用しよう。 「一九四六年から一九六九年にかけて、合衆国政府は軍備に一兆ドルを越える支出を行った。その大半がケネディからジョンソンへ続く両政権下での出来事で、この時代に[ペンタゴンが主導する]国家管理体制が正式な制度として確立された。一兆ドルという金額は、想像を絶する規模(一兆個の何かをイメージできるだろうか)に違いないが、軍備のために国民にかかる負担の総体を計る目安とはならない。其のコストは、失われたものの中に潜み、国民生活が諸方面で荒廃してきた度合を集積する事によって計られる。[際限なく軍備を拡張する]人間の愚かな行為を長期にわたって正せなかったために、この荒廃がもたらされた」 |
更に、ジョンソン氏は続けられます。
トマス・ウッズが、メルマンの分析はアメリカ経済の現状によく当てはまるとして、貴重な解説文を書いている。 「米国防総省によると、一九四七年から一九八七年までの四〇年間に、七兆六二〇〇億ドル(一九八二年のドル価値で換算)が資本資源として軍備に支出された。一方で商務省は、一九八五年に、国内の工場設備やインフラの総価値を七兆二九〇〇億ドル強と推定している。つまり、この四〇年間に支出された資本資源を使っていれば、アメリカの資本ストックは二倍に増えていたことになる。あるいは、既存の設備を一新して近代化することもできた」 二一世紀に入って、アメリカの製造基盤はほぼ消滅してしまった。その主な原因のひとつが、設備や器材などの資本資産を近代化または交換しなかったことにある。 「二一世紀に入って、アメリカの製造基盤はほぼ消滅してしまった」状態では、米国の生産能力は低下し、貿易力が低下するのは当然です。 経常収支は、国の貿易黒字あるいは赤字の上に、国境を越えて支払われる利息や特許料・印税・配当金・キャピタルゲイン・対外援助など、さまざまな収支を加算して求める。たとえば日本の場合、何かを製造するには必要な原材料を輸入に頼らざるをえない。原材料の輸入に途方もない額の支出をしたうえで、なお日本の対米の貿易収支は年八八〇億ドルの黒字になっている。経常収支残高は(中国に次いで)世界第二位だ。 合衆国は第一六三位。最下位である。大きな貿易赤字に苦しむオーストラリアや英国よりも下だ。〇六年の経常収支を見ると、一六二位のスペインが一〇六四億ドルの赤字だったのに対して、合衆国は八二五億ドルの赤字を出している。 これが持続可能であるはずがない。 |
この状態では、双子の赤字(「経常収支の赤字」並びに「財政収支が赤字化」)の泥沼に嵌まり込むのは当然過ぎます。
その結果、米国は米国債(財務省証券)を増発します。
そして、その米国債を日本は支え続けています。
ロイター(2007年03月31日)の記述は次のようです。
・・・ 米財務省は30日、対米証券投資の改定値を発表した。1月の海外勢による財務省証券保有額は、2兆1200億ドルとなり、今月半ばに発表した2兆2400億ドルから下方改定した。 中国の財務省証券保有は4005億ドルと、3536億ドルから上方改定。日本は6274億ドルで、6488億ドルから下方改定した。 |
元外交官原田武夫氏のホームページ『国際政治経済塾』を訪ねさせて頂くと、米国債を支える日本の状況に愕然とさせられます。
・・・最も素直に考えるならば、日本は円高による景気減退を防ぐべく、これまで売ってきて余裕のある「米国債のための枠」を再び埋めることになるであろう。つまり、ここであらためて米国債を“買い増す”のである。少なくとも2003年から2004年にはそうしたのであるから、今回もそれによってドル安基調を転換させるべきだと考えるのが自然な成り行きだろう。 ちなみに、かつてこのオペレーションの前半で最高責任者だったのが、某テレビ番組で「そんなカネ、カネいうな!日米同盟で守ってもらっているのだから、少しくらい米国にカネを渡す羽目になっても文句などいうべきではない」と私を面罵した塩川正十郎財務大臣(当時)である。 |
「塩川正十郎財務大臣(当時)」が「日米同盟で守ってもらっているのだから」と怒鳴ったそうですが、殺される理由も無いイラクの国民を米国が殺戮する権利はありません。
その米国のイラク攻撃に「日米同盟」の名目で、日本は加担しています。
しかし、「塩川正十郎」の名を聞くと、「機密費問題」での“忘れました”答弁を思い出します。この件をフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から引用させて頂きます。
2001年1月にテレビ放送で内閣官房長官時代について触れ「(機密費を)野党対策に使っていることは事実。現ナマ(金)とか、一席設けるとか」「(官邸の金庫に)4,000万〜5,000万円入っていた」と述べていたが、その件について5月15日衆院予算委で日本共産党の穀田恵二が質問したところ、「忘れました」「官房長官は短かったし、思い出せない」という逃げの答弁に終始し、その後もついに明確な答弁はなかった。 |
1月にテレビで述べていた事実を、その4ヵ月後の5月には、財務大臣の要職(4月26日就任)にありながら国会では“忘れました”と白を切る人物、しかも、財務大臣であるのなら、税金(機密費)の使い道をしっかりと把握する責任があるのに、あまりに無責任な人物!
このような信用が置けない、無責任極まりない人物うを、わが日本国民は「塩爺(しおじい)」との愛称を捧げて慕っていると言うのですから呆れてしまいます。
このような国民に落とし込んだのは、マスコミにも大きな責任があるはずです。
「塩爺(しおじい)」をテレビに出し、「塩爺」と持ち上げていれば、視聴者は喜び、視聴率が上がるのでしょうから!?
もう「塩爺」には引っ込んで頂いて、次の進みます。
Democracy Now! JAPAN「戦争税なんて払いたくない 連邦税の40%が軍事費に?」
では次の記述を目にします。
・・・
今年の連邦税2兆ドルのうち約40%が軍事費に回ると、NGO「全米優先プロジェクト」が発表しました。・・・ 27%が イラク戦争など現在行なわれている戦費に ・・・ 日本での最近の軍事費で言うと、イラク派兵でかかった費用は昨年4月までで760億円、現在進みつつある米軍再編における日本の費用負担はグアム移転費7000億円を含んで総額3兆円と言われています。アメリカ政府と協力して「戦争もやむなし」の路線を貫く限り、宇宙防衛構想も含め、制御不可能な勢いで出費がかさんでいくことでしょう。 |
何故日本は米国に追従するのでしょうか?
その謎の一部を、翻訳者の安濃氏は、文末の【解説】で解き明かしてくれます。
一九五七年六月、渡米した岸信介首相は、首都ワシントンの郊外で、アイゼンハワー大統領とゴルフを楽しんだ。二〇〇六年二月、ベトナムでジョージ・ブッシュ大統領に会った安倍晋三首相は、五〇年前に祖父がパットを決める瞬間を撮った記念の写真を手渡している。その写真に、プレスコット・ブッシュ上院議員も半ズボン姿で写っていたからだ。二人の孫たちは、それぞれ家の伝統に思いをはせたかもしれない。しかし、写真が冷戦を反映していたとは考えもしなかったろう。 チャルマーズ・ジョンソンによると、アメリカはソ連との冷戦に備え、日本の民主化をあきらめて衛星国とする方針に切り替えた。まず対策として、財閥と保守勢力を復活させ、犯罪組織と繋がりを持つ極右勢力を解き放つことにした。これらの勢力がもともと反共だったからである。 一九四八年一二月、東条英機らが処刑された翌日に、A級戦犯だった岸は、児玉誉士夫とともに巣鴨から釈放されている。政界に復帰した岸について、ジョンソンはこう言う。ナチス政権下で軍需相を務めた「アルベルト・スピアがドイツ首相になっていたら、ニューヨーク・タイムズ紙もさすがに黙っていなかったろう」。アメリカは、児玉などを介して、鳩山一郎や河野一郎に資金を渡し、自由民主党の結成(一九五五年)を助けた。CIAは、対日工作に関する機密文書を保管しているはずだが、合衆国の法に反してまで、半世紀を過ぎた今でも公開を拒絶している。 朝鮮半島に残る冷戦の傷跡は、誰の目にもよく見える。駐留する米軍。半島を分かつ三八度線。しかし自民党による一党体制と、孫子の代までアメリカに追従する政策が、冷戦の置き土産だと知ることは難しい。 アメリカが冷戦の勝利を信じ、唯一の超大国だと誇ったとき、驕りや過信を罰する女神ネメシスが降り立った。ソ連と同じように、アメリカも冷戦に敗北したとジョンソンは訴える。広大な帝国を維持しようと、過剰な軍国主義と無謀な経済政策を続ければ、いずれ破綻するしかない。 カエサルがルビコン川を越えたとき、ローマは共和制を捨てた。アメリカは帝国を捨て民主制を守れるか。いま選択の時が迫っている。(安濃) |
安濃氏の記述は「しかし自民党による一党体制と、孫子の代までアメリカに追従する政策が、冷戦の置き土産だと知ることは難しい」で、謎解きは途中まです。
でも、その謎解き続きは、“米国の「軍事ケインズ主義」を利権に悪用した力が、米国同様に日本にも(「道路ケインズ主義」同様に)存在し続けている結果である”となるのでしょうか?
しかし、利権漁りの結果、(マッチポンプ的に)各国に軍備を増大させ、利権に全く縁の無い多くの人達が戦渦に巻き込まれるのはもういい加減に止めて欲しいものです!
「道路ケインズ主義」は自国の荒廃ぐらいですが、「軍事ケインズ主義」は自国だけではなく他国までも荒廃させてしまいます。
“日本は米国の友人である”と口では言っても、米国の「軍事ケインズ主義を止めろ」と説得は出来ないのでしょうから、せめて、米国の属国を脱し、「軍事ケインズ主義を破棄する」意気込みだけは見せて欲しいものです。
最近、どなたかが「改革だ〜〜〜!」、「自民党をぶっ壊す〜〜〜!」と叫んだようでしたが?
そんな意気込みを米国に向かって示して欲しいものです。
(補足)
『日本の真実 副島隆彦編著:成甲書房』に於いて副島氏は次のように「軍事ケインズ主義」(戦争経済)賛辞を掲げ居られます。
「戦争をやめて世界中が平和になれ」と言ったからといって、現実の世界はそんなに甘くは動かない。そういうことは私もよく分かっている。人間の世界に、どうして必要以上に争いと憎しみと悲劇がこんなに持ち込まれるのか。それは、ウオー・エコノミー(war economy 戦争経済)、ウォー・ブースト・エコノミー(戦争刺激″経済)という思想のせいである。戦争をすることで、それによる大破壊で、兵器と物資を大量に燃やし尽くすことで、それで経済を刺激する。溜まった在庫(過剰生産、サープラス surplus)と、過剰生産設備を破壊することがどうしても必要だ。戦争という大破壊で人もたくさん死ぬ。だが同時にそれで国民経済を刺激して、それで新たな需要(ディマンド)を生んで、それで経済を活性化させる。そうやって戦争で好景気を計画的に出現させる。そうしないと、人間世界の経済は保たないのだ。
戦争は悪だ。だが経済と景気にとっては、無くてはならないものなのだ。このことを私たちは知らなくてはならない。この理屈も現実も私は、普通の人の百倍は知っている。このことを、私は自分の『戦争経済(ウオー・エコノミー)に突入する日本』(祥伝社刊、二〇〇六年九月)で書いた。 |
このような論が罷り通るなら、
「食糧難を解決する為に、人間の肉の食する必要がある!」 |
更には、
「自国民の為に、他国へ攻め入って、人肉を確保するべきである!」 |
あるいは、
「美容や長生きの為には生きた人間の血肉を食するのが不可欠である」 |
等の論が成り立ってしまいます。
恐ろしい事です